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クラスター爆弾 JCBLでの予備的討議

 ラオス、イラク、コソボなどで大量に使われたクラスター爆弾はオタワ条約で定義する「対人地雷」ではありませんが、その不発弾は実際の効果の上で対人地雷と変わりません。この非人道的な兵器は、近年の米国等による空爆を中心とする攻撃において膨大な量が投入される傾向にあります。ここに紹介するのは、1999/10/26に持たれたJCBL運営委員会での予備的なインプット&討議の記録です。

「クラスター爆弾とは」 首藤信彦(JCBL運営委員・インターバンド代表)

■クラスター爆弾は古くからある兵器で、第2次世界大戦中に開発され、ベトナム戦争で多用されて問題となったものである。第2次大戦で日本に落とされた焼夷弾もその一種である。ベトナム戦争の際にナパーム弾や枯葉剤と共にその非人道的な効果が広く知られて問題化したため、今回コソボで病院等の非軍事施設に対してまで使われた映像を見るまでは、これほどの量が備蓄されていて使用されるとは思いもよらなかった。

■広域に広がる性質をもつため、特定の対象に向けて使われる爆弾とは違い、民間人にも被害が及ぶことが多い。そのため、NATOのガイドラインでは対象を飛行場などに限って使用できることにしている。しかし今回コソボでは、市街地に対しても使われた。

■クラスター爆弾は最新の電子機器で制御されるような兵器ではなく、物理的な仕掛けで作動するものである。安価で、大量に使われるものであるが、対人地雷と違い、伝統的に製造技術を持つ特定の国・企業でしか作られていない。

■クラスター爆弾には様々な種類のものがあるが、地雷廃絶キャンペーンで問題としているのはCBU-59APAM、CBU-58など、空中で親爆弾からボール状のものが高速でスピンしながら飛び出し、それが何かに接触すると金属片を放出するタイプのものである。300?四方に効果を及ぼし、金属で出来ているので凄まじい殺傷力がある。コソボではこれが沢山、不発弾として残って「地雷化」している。落とされる高度が高かったり、落ちたところが砂地、沼などだったりすると不発弾として残り、ちょっとした振動で爆発するのである。

「コソボの状況とクラスター爆弾」 長有紀枝(難民を助ける会)

■コソボとは:(1)衆人環視の中で地雷が埋設された初めてのケースであった。オタワ条約の普遍性が問われることとなった。(2)難民の流出・帰還の早さ・量ともに記録的なケースだった。(3)自らの手で製造した地雷が埋設され、被害を出した従来になかったケースとなった。(4)難民の地雷に関する意識は高かったが、援助団体は難民に対して何もすることができなかった。(5)ダメージを受けてもインフラがそれなりにあったため、難民の帰還を阻害する要因は地雷ぐらいだった。

■地雷はコソボ自治州とアルバニアの国境山岳地帯に主に埋められた。そのため、単純に地雷の埋設数を云々することには意味がなく、数は取りざたされていない。山岳地帯の他に市街地に不規則に地雷が埋設され、“NuisanceMineField”と呼ばれている。そのため、「ここは安全」という線引きをできない状態にある。地雷除去のスピードを落とすことにもなるため、マーキングはされていない。

■コソボで使われたクラスター爆弾は、アメリカ製、イギリス製のものだった。クラスター爆弾は落とされる高度が高くなると不発弾になる率が上がるが、対空砲火がある実際の戦闘場面では高い高度から落とされがちである。使われたクラスター爆弾は2つのヒューズによって不発率を低くしてあるものということだったが、あまりにも不発弾化したものが多く、故意に操作が加えられていたのではないかとさえ思われた。また、明らかに期限切れの古いものが使われていたことが分かっている。まるで在庫処分しているかのように大量に使用された。

■ICBLは、1999年9月に開かれたCC(CoordinatingCommittee)でクラスター爆弾について話し合った。クラスター爆弾は市民に及ぼす効果から見れば事実上「対人地雷」に他ならないものであり、ICBLはこのような全ての無差別殺戮兵器の使用を糾弾する。またノーベル平和賞を受けた団体としてICBLにはこのような非人道的な兵器をなくしていくモラル上の義務も認識する。しかし、オタワ条約で定義した対人地雷に関する取り組み自体まだ緒についたばかりであり、これまでICBLが成功を収めたのも対象を敢えて絞って取り組んできたからである。そのことを鑑みて、クラスター爆弾はICBLの運動の対象とはしない。ただし、ICBLの各国キャンペーンや参加団体は、それぞれの判断で、クラスター爆弾を初めとする不発弾(UXO)の問題への取り組みを続けるだろう。以上のことが確認されている。

質疑

■クラスター爆弾については不発率を低くすることを探る方が現実的なのでは?

←この爆弾は対人地雷のような「静的」なものでなく「動的」なものであり、また電子装置をつけるようなものでなく、物理的な装置によるものであることから、不発率を低くすることは技術的には現実的でないだろう。

←規定の高度で投下されず、また期限が切れているものまでが使われているというコソボでの使用の実態を見ると、爆弾自体の性能を向上させることは意味がないだろう。また在庫処分のように使われた後で、さらなる開発と製造を促すような提案をするのはおかしいのではないか。

(記録と再構成:東京YMCA真野玄範)